夜ごとのシーク
外交官の娘、ソレルは中東の国ハラスタンで育てられた。
両親が早世したあとも、故国イギリスには戻らず、シークの補佐官マリクを後見人として、王宮で暮らしてきた。
マリクのもとで過ごすうち、彼への尊敬の念は恋へと変わった。
ところが、マリクはソレルを妹のようにしか思っていない。
マリクが私の気持ちに応えてくれることは決してないだろう。
苦しさに耐えかねたソレルは帰国する決意を固めた。
自由な国で人並みに恋もしたいとマリクに言うと、彼はまるで嫉妬に駆られたように、憤然と切り返した。
「それなら、まず私が手ほどきをしてやろう」「でも、結婚してくれなかったら困るわ!」ジェマは動揺した。
六日後の誕生日までに結婚しなければ、ジェマに父の遺産は入らない。
なのに、お金を渡して形ばかりの夫になるはずだったマイケルが、やっぱりそんなことはできないと言いだしたのだ。
名門ホテルのオーナーだった父の遺産は、継母のものになってしまう。
だがマイケルが去っていった直後、意外な人物がジェマを訪ねてきた。
十年前にホテルで働いていたイタリア人のアンドレアスだ。
ジェマがさんざん笑いものにしたあげく、仕事も奪った若者……。
今は高級ホテルを世界各国に所有する彼は、ジェマの話を聞き、なぜか彼女を救おうと申し出た――彼の子を産むという条件で。
シチリアへ向かう飛行機の中、チェシーは震えていた。
大丈夫よ、私はもう半年前の私じゃない。
逃げ回るのはやめて、本当の自由を手に入れる。
そのために戻ってきたのだから。
決意を新たに空港に降り立ち、チェシーは迎えの車に乗りこんだ。
だが、後部座席には誰かが座っている。
目を向けなくても誰なのかはわかった。
ロッコ・カステラーニ。
億万長者の人でなし。
そして、結婚式当日にチェシーが捨てた夫だった。
ガブリエラは義理の兄ルーファスに恋をしていた――母がルーファスの父と再婚したその日から。
だが、彼はそんなガブリエラの心を踏みにじり、金目当ての誘惑はやめろと冷たく言い放った。
以来ガブリエラは彼を憎み続けてきた。
六年後、ルーファスの父が亡くなり、意外な遺言が明らかになる。
ガブリエラとルーファスが遺産を相続するためには、二人が夫婦となり、半年間一緒に暮らす必要があるのだ。
憎悪をたぎらせたルーファスのプロポーズに、ガブリエラはイエスと答えるしかなかった。
エリザベスは看護師派遣会社を切り盛りしている。
彼女が送り込んだ六人の在宅看護師が次々と追い返されたため、エリザベス自らギリシアに飛び、彼の屋敷に出向いた。
患者の名はクリスチャン。
ギリシア随一の大物実業家だ。
事故で失明し、歩くこともできない。
だが、医師の話では運動機能も視力も回復が見込めるという。
患者を励ますエリザベスに、彼は言った。
「ぼくは君が賞賛するような英雄ではない。
怪物さ」包帯をむしり取ったクリスチャンの顔には大きな傷跡があった。
エリザベスは息をのんだ。
彼は傷跡さえも美しい……。
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